第2回|外部の資源を取り込む手法

今回は、M&Aを含む外部資源の取り込み手法について、徐々にエスカレーションする形で比較します。自社で過去に実施した施策や、現在検討中の案件に照らして読み進めてください。

手法効果費用実行準備期間目安
業務提携共同営業、広報的効果・設計時:提携先の探索
・実行時:条件交渉
・運用時:共同営業体制の構築
1か月
少額出資業務提携に加え、出資先への限定的な影響力・設計時:出資先の探索、出資条件検討
・実行時:条件交渉、株価評価(高ガバナンス企業は専門家報酬が発生)
・運用時:共同営業体制の構築、モニタリング実施
3か月
ジョイントベンチャー(JV)共同新事業・設計時:JV先の探索、相互拠出財産等の協議、担当人材選定
・実行時:法人設立、条件交渉(弁護士の関与が望ましい)、出資財産評価(高ガバナンス企業は専門家報酬が発生)
・運用時:法人運営、共同営業体制の構築、モニタリング実施
半年以上
M&A対象企業・事業が保有する資源を包括的に取得・設計時:買収領域・個別企業の探索、投資委員会等M&A実行インフラ整備(複数案件計画時)
・実行時:条件交渉(弁護士の関与が望ましい)、専門家報酬が発生(株価評価含むファイナンシャルアドバイザリー、各デューデリジェンス)
・運用時:法人運営、シナジー創出の活動、管理部門統合、モニタリング実施
半年以上

業務提携
商流構築を目的とするものが多く、広報的な意味合いを帯びることもあります。製造業のように供給能力管理が重要な業種では重い契約となりますが、サービス業では効果が限定的になることもあります。
負担は小さい一方、成果の定量化が難しい傾向があります。

少額出資
「純投資」を除外し、持分20%未満の出資を前提とします。
業務提携と併用されることが多く、取締役やオブザーバー派遣、計算書類閲覧などの情報取得が追加される一方で投資実行時の審査や投資後のモニタリング実施等の管理工数が発生します。
少額出資はM&Aの亜種と捉えられがちですが、IPOやM&Aを志向する出資先は株価決め打ちで交渉を開始することが多く、交渉の中心は株価以外の権利・義務に集中します。
成果は業務提携同様に定量化が難しい傾向があります。

ジョイントベンチャー(JV)
一時的なプロジェクト型やコンソーシアム型を除き、恒常的な事業運営を前提とする形態に限定して論じます。
JVでは、知的財産等の金銭以外を拠出するケースも多く、設計の難易度は他の手法と比較して高くなります。また、JV解消条件の設計、運営人材の選定など、設計・運用の双方で高い能力を要するため、担当できる人材が限定される傾向があります。
一方で、性質の異なる企業が各々の強みを持ち寄り、継続的に外部資源を活用する仕組みとしては、4手法の中で最も適した手段です。たとえば、事業会社がITコンサルティング会社とのJVを通じてIT基盤の構築・運用を行うケースなどが挙げられます。

M&A
実行時点で対象企業・事業が保有する資源を包括的に取得する一方、取締役会・管掌事業部・経営企画の検討工数や専門家報酬に加え、定量化しにくい統合費用も発生します。
統合は管掌事業部及び人事、法務、IT等の管理部門が主役になります。管掌事業部は部門売上等の財務数値取り込みを中心とするインセンティブを有しますが、管理部門はインセンティブを有しません。連続してM&Aを実施する場合は管理部門の関与方針設計と資源管理が必要となります。

手法選択は得られる効果だけでなく、社内の資源制約も踏まえて検討するとよいでしょう。


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